もりハグ!広場

「港北ニュータウン緑の会」視察会 その2

港北ニュータウン緑の会 ゆるやかに繋がる地域コミュニティのわ

東京農業大学 4年 地域環境科学部 造園科学科 岡本 花子

「港北ニュータウン緑の会」 さんの活動拠点は、大塚・歳勝土遺跡公園。最寄りのセンター北駅前は、大型ショッピングモールや娯楽施設が立ち並び、人々で賑わう街ですが、駅の少し向こうには竹林や雑木林・畑が残り、かつての農村地帯の面影が地域住民の方々の管理によって今も守られていることがわかります。
大塚・歳勝土遺跡公園の中にある民家園。

駅前から徒歩10分ほど歩いて、大塚・歳勝土遺跡公園に到着すると、「港北ニュータウン緑の会」の会長である永田さんが活動の案内をしてくださいました。永田さんはここで活動を始めてなんと40年ほどにもなるそうです。ここまで長く続けて来られたのはどのような理由からなのでしょうか。

市民向け講座「雑木林塾」にて、みんなで作った竹垣に触れて話す永田さん。

1年間を通して行うのは、竹林、雑木林、草地の整備作業、雑木林塾などの講習会、市民対象講座の開催など多岐に渡ります。
春には、毎年山ほど採れるという竹の子採り大会、植物博士の北川淑子先生との野草を食べる会や自然観察会、林内を美しく保つ雑木林の下草刈り。
夏には、納涼会や市民を対象にした雑木林塾での竹垣や竹細工作り。秋冬には竹林の間伐や樹木の剪定、バームクーヘン作りなど。様々な企画を行い、みなさんたのしんで交流をしながら、里山整備をされている様子をお聞きできました。

ここは竹藪に覆われていたそうですが、竹を切ることで少しずつ雑木林に戻ってきているのがわかります。
雑木林の復元は永田さんたちの大きな活動のひとつです。

ちなみに、一度生えると地中で根を伸ばして広がり続ける竹ですが、早く根絶させる裏技を教えていただきました。

1mくらいの長さを残して切ると、竹は切られたと錯覚せず水分をどんどん出して、早く枯れるそうです。

大塚・歳勝土遺跡公園の開設前はほとんどが竹藪だったそうですが、永田さんたちの活動により昔からこの土地に根付いていたクヌギ・コナラ・イヌシデ・クリ・ヤマザクラなどの植生が戻ってきています。過去に萌芽更新も行ったそうです。木を50cmほど残して伐採したところからは新しい芽が出てくるので、それをまた数年にわたって残す幹を選んで剪定し、一つの切り株から3本幹が出てくるように育てます。

萌芽更新や雑木林の復元事業は、花王株式会社と(公財)都市緑化機構による助成事業「みんなの森づくり事業」というサポートによって行われたそうです。
こちらも竹藪で覆われていたところです。今では植林した木々が大きくなり、萌芽更新を経て株立ちしている木々も多く見られます。

雑木林に復元した場所では、年に2,3回の自然観察会で植生の変化を記録しているそうです。
もともと雑木林だったところには多くの種が入ってくるといい、畑だったところには1,2種などいくつかの種類のみしか植生が入って来ないなど、それぞれの場所によって植生の変化が見られます。
また山野草として人気があり、春に儚げで上品な花を咲かせるエビネやキンラン、ギンランなども竹藪を整備することで姿を見せるようになったそうです。

園内には雑木林に竹藪が繁茂したところだけでなく、もともと竹林だった場所もあります。ところどころにある竹林の手入れは、こうして切って積み上げて、チッパーで細かくして地面に撒き、土に分解されるのを待ちます。竹と竹の間の距離をちょうどよい生え方になるように、繰り返し切って調整していきます。この竹林も手入れがされているようですが、まだまだ整備ができるそうです。竹の間は、傘をさして歩けるほどの間隔がちょうどいいのだとか。

ここはすでに整備ができている竹林です。爽やかな風がよく通って、さわさわと心地の良い音がなります。Before Afterで見ると竹同士の立つ間隔がだいぶ違うことがわかります。綺麗に管理された竹林は心なしか蚊も少ない気がしました。
また日々の樹木の見廻りも欠かせません。
倒れそうな木や危ない木をこまめにチェックして見廻ることで園内を安全に保ちます。

「港北ニュータウン 緑の会」の活動方針は、

怪我をしない・怪我をさせない・無理をしないで安全な活動を目指すこと。

この方針からも分かる通り、ボランティアのみなさんの参加の仕方も自由で様々です。

現在は30代から80代までのメンバーが活躍しているそうですが、それぞれが自分のできることをやる、自分たちが面白いと思うことをやる、楽しく活動する。竹の子採り大会やイベント参加だけでもいいし、お弁当を食べにくるだけでもいい。公園の自然を子どもや大人たちにも楽しんでもらうために、季節ごとのイベントもあります。

令和6年度の作業計画表

園内の敷地は約4.3haと大変広く、他にも公園内の民家園の垣根手入れや近隣団地の保存緑地、民家の竹林整備も行っており、「民家園竹林クラブ」や近隣団地の保存緑地グループなどと役割分担をしながら活動をしているそうです。

いつものメンバーが揃っているというお昼の時間。座っている竹のベンチもお手製です。

都市の中にある自然環境は、住宅地とも距離が近く、これだけの量の緑を管理するというのは、難しいことがたくさんあります。それでも1年間の管理や講習会を通して、地域住民の方々がゆるやかに繋がる仕組みができていて、自然に地域のコミュニティとして機能し、管理がまわっていく。

これは本当に素晴らしく、永田さんやみなさんの”楽しんで作業する”という姿勢が、また参加したいと思えるようなのびやかで居心地の良い雰囲気を作っていると感じました。

里山の中を歩くのは、それだけでも森の空気に包まれて気持ちがよく、癒されます。

会員さんは随時募集中だそうなので、竹の子採りや野草を食べる会など、みなさんもよかったら参加してみてはいかがでしょうか。

港北ニュータウン緑の会のHPはこちら▶︎ http://midorinokai.com/gang_beinyutaun_luno_hui/TOP.html

港北ニュータウン緑の会 もりハグ!団体情報ページ▶︎ https://morihug.net/network/groups/000149

港北ニュータウン緑の会の永田会長の記事。「街中に雑木林を復元 多様な生物が共生する美しい雑木林作り」▶︎ https://morihug.net/square/000688.html

岡本花子さんのレポート(PDF)はこちらからご覧ください