もりハグ!広場

地名を紐解けば、地歴がわかる!「石コロビ池」の秘密

みくまりの森サポートクラブ(広島県)さんから、とても興味深いお話しをうかがいました!

もりハグ!活動ニュースに寄せてくださった「みくまりの森サポートクラブ(広島県)」さんの活動レポート「NEWSみくまりの森 第184号(発行日令和6年2月14日)」に「石コロビ池周辺の管理道で作業を行い…」という文章があり気になりました…「石コロビ池」って面白い名前だなー、通称なのかな?誰かが石につまづいて転んで池にぽちゃんと落ちてそんな名前になったのかな?等々、想像が膨らみます!気になって仕方ない。と、いうことで、「みくまりの森サポートクラブ」さんに「石コロヒ」池の由来を教えてくださいとお願いしてみました。(もりハグ!事務局)

石コロヒ池の由来について

「石コロヒ」とは転んだ石(コロヒ石)という意味です。府中町の水分峡森林公園の住所は「広島県安芸郡府中町字石コロヒ83番」となっています。公園内には「石コロヒ山」という名の山があり、「石コロヒ池」はその傍にあります。
「石コロヒ池」は、府中町水分峡森林公園の住所である「石コロヒ」から名づけられた名前で、正規の名称です。
なお、この池は昔からある池ではなく、農業用ため池として作られた比較的新しい池です。
このことは、昭和七年四月廿日に発行された「藝州府中莊誌」の中の池沼の項に「本村には池沼の見るべきもの殆んど無く、雨溜池に属するもの十四ヶ所あるのみ」と記され、その中に「石コロヒ」の名がないことから明らかです。

ここで「石コロヒ」の地名由来について説明します。
広島県の土石流危険渓流、急傾斜地崩壊危険箇所などの土砂災害危険箇所数は約3万2千カ所で全国最多となっています。
広島県はその理由として、平野部が少ないことから山すそまで宅地が広がっていることとともに、「脆弱な地質」をあげています。

広島県の地質は、花崗岩及び流紋岩が広く分布し、県下のほぼ70%を占めています。特に花崗岩は48%を占め、断層や節理等から水が染み込むと深部まで化学的変質が進行し、いわゆる《マサ土》と呼ばれる風化花崗岩となるため、土砂災害が発生しやすい「脆弱な地質」となっています。

山の中に入り、40~50㎝も掘れば花崗岩が現れます。また、一回土砂災害が発生して固い花崗岩が現れても100年も経てば花崗岩は風化し再び元の状態になります。

このような「脆弱な地質」であるため、水分峡は昔から豪雨による土砂崩れが再々発生しています。

崩れた花崗岩は、転げ落ちる過程でだんだん角が取れて、転がりやすい石となります。

「石コロヒ」の地名は、昔から洪水の度に写真のような大きな石が山から流れでたことから付いたのではないかと思われます。

近年では、平成30年7月5日からの西日本を中心とした豪雨により、各地で甚大な災害が発生しました。府中町でも土砂崩れなどの災害が多く発生しましたが、その中でも特筆すべき災害が1件あります。それは、豪雨も収まり晴れの日が数日続いた10日の午前11時すぎ、突然『ゴオーー』という音をたて、流木を伴う濁流が(えのき)(がわ)を流れ下り、流れの緩やかになった寺山橋で詰まり、泥水が越水して住宅地に流れ込み大きな被害を受けました。幸いにも人的被害はありませんでしたが、この時の様子は全国に放送されました。

この突然発生した濁流の起点は水分峡森林公園内の上部で、みくまりの森サポートクラブが活動する「憩いの森」のすぐ近くです。

災害発生時の寺山橋付近の様子
災害発生時の寺山橋付近の様子
寺山橋に至る途中の橋で止まった転石
水分峡の林道に流れ出た転石

災害の復旧において、川の中の土砂を除去する際、重機では取り除けないほどの大きな石(転び石)が多数出てきました。また、土石流が流れた水分峡の谷筋や林道にも大きな石が転がり出ていました。このような石を「コロヒ石」と呼んでいたのではないでしょうか。


参考までに府中町公式サイトに掲載している「府中大橋にあるオブジェ」について紹介します。
(書かれている記事をそのままコピーしています。)
府中大橋にあるオブシェは、平成8年度に開催された「第51回ひろしま国体」の雰囲気づくりや、歓迎ムードを盛り上げるためと、国体が終わった後も町のシンボルとなるように考え、平成8年10月に設置しました。

オブジェのある場所は府中町の入り口であり、府中大橋やJR新幹線橋脚等の複雑な景観に負けないように大きくしました。オブジェのテーマは「ころび石の町」です。水分峡に「石ころび」という地名があり、そこにある「ころび石」が発想の原点となっています。府中町は洪水の度に「石ころび山」から「ころび石」が流れ、被害を受けてきましたが、人々はその石を利用して石積等を作り、災害を克服してきました。こうした「石ころび山」の「ころび石」の歴史、思いをテーマとして設定しました。「ころび石」は動くことにより新たなる発展と、その未来が形成されていく過程を表現したものです。

なるほど。
「石コロビ池」は、「石につまづいて転んで池に落っこちた」ではなく、「ころび石がある池」だったのですね。大雨の度に大きな石がゴロゴロと山から転がってきたのですね。
大雨の後に地域の皆さんが、「あのコロビ石どうにかしなきゃな・・」「大きなコロビ石が庭先に流れ着いたんだよ・・・」というような会話をされていたのかな・・
古の人々の暮らしを想像してしまいました。
そして、「石コロビ」の由来を紐解くことで、この土地の地質や地形の特徴を学び、災害にも備えることができますね。みくまりの森サポートクラブさんが取り組まれている、森を保全する活動もその一つだと思います。

全国で活動されるみなさんの地域でも、おもしろい地名とそれにまつわる由来があるのでしょうね。是非、「ウチにはこんな地名があり、こんな由来があるよ」という情報があったら活動のエピソードとともに是非お寄せください。(もりハグ!事務局)