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「東お多福山草原におけるススキ草原の景観および生物多様性の保全・再生」

東お多福山草原保全・再生研究会






          東お多福山草原保全・再生研究会
                    阿部 洋平

東お多福山について
 瀬戸内海国立公園六甲地区で唯一の広大な草原があり、神戸市と芦屋市にまたがって位置しています。
 戦後まもなくまでは80ha以上の面積を誇るススキ草原で、キキョウ、スズサイコ、オミナエシ、ワレモコウ、オケラ、ツリガネニンジン、オカトラノオ、オトギリソウ、リンドウなどの草原生植物が多数みられる環境でしたが、その後の管理放棄によってかつて一帯に広がっていたススキが失われつつあり、生物多様性の乏しいネザサ草原に推移していました。
この草原を以前のようなススキの優占する草原景観を復元し、草原性植物の多様性や個体群を回復させることを目的として、平成19年より活動を開始しました。
 
ネザサとの格闘と活動の成果
 ススキ草原の復元するためにはまず現在優占しているネザサを刈り取りすることが先決でした。年に5回程度活動エリアを区分けして、刈り払い機を用いて3m以上に成長しているネザサを刈り倒し、人力で運んで生育を抑えてススキ及び他の草原性植物を回復させようとみんなで協力し作業をしています。次第に増えた活動面積は約3haとなり、趣旨に賛同し活動に協力してくれる団体や個人の方も年々増え、今では毎回約60名のボランティアが山頂付近でネザサの抑制に奮闘しています。
ネザサと格闘する一方で、その活動の効果を科学的に検証するためのモニタリング調査も年に3回行ってきました。どの調査区画でもススキが順調に回復し、ササユリやキキョウ・ワレモコウなど草原性植物の個体群も増えてきていることが確認されています。
 標高697mの東お多福山山頂付近からの眺望の回復は目覚ましいものがあり、視界を遮るネザサが一掃されて阪神間から京阪方向へも瀬戸内海をバックとする素晴らしい景観を見ることができるようになりました。
 ススキの草原が回復につれて、そのススキを利用しようという動きもでて、毎年冬にススキを刈り集め地元にある茅葺き民家の修復の際に材料として使ってもらうことも始まりました。これまでに、東お多福山のふもとにある芦屋市の文化財の会下山遺跡や神戸市北区にある兵庫県の文化財の南僧尾観音堂などで使用され、活動する励みの一つになっています。

助成のチカラ
 こういう活動を強力にバックアップしていただいたのが今回の花王・みんなの森づくり活動助成でした。山頂付近での活動なので、刈り払い機などの動力機械を車でなるべく近くまで運ぶ必要があることや、活動人数が増え刈り払い機の稼働が増えたため、人件費や消耗品費の上昇などが活動における課題となっていましたが、それらを解消することができました。新型コロナウイルスの影響もあり、活動の縮小を余儀なくされていますが、一定の成果を生み出すことができました。
 また、モニタリング調査に専門家を招聘するため費用も賄うことができ、きちんとした成果報告書を発行する予算も獲得できたため、内外の方々に活動の成果を知ってもらうことができています。
まだまだ可能性に満ちたこのお多福山草原の自然を持続可能な形で保全・再生し、子どもから大人まで、東お多福山草原の生物やその営みを楽しめるような活動を継続していきたいです。

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