もりハグ!広場

人を育む森のパワー!

常磐の森再生プロジェクト 松原哲哉さん × こそだてママnet☆ 福井さなえさん クロストーク(3月8日実施)

松原哲哉さん
常磐大学で美術史の教員を務め、この春退官。水戸の偕楽園公園内にある大学の構内に広がる「常磐の森」の再生活動にゼミの学生たちと取り組み、ホタルを復活させました。公園内で活動する3つの団体とホタルネットワークmitoを結成し、保全活動や生き物観察会を実施しています。今後はゼミ単位での活動ができないので、「常磐の森」での取り組み継続について現在模索中とのことです。

福井さなえさん
NPO法人こそだてママnet☆理事長。身近な里山をフィールドに、親子の野外活動や「森のようちえん」活動をされています。目指すは子育て支援と里山保全の両立。森の整備団体と連携して、里山整備の手ほどきを受けながら、親子での野外活動を続けています。

森とのかかわり きっかけは?

福井:松原先生は大学でイタリア美術史を教えられていて、何がどうなって蛍に行っちゃったんでしょうか?

松原:僕はイタリアの古い美術品が大好きですが、考えてみれば、これは遠い異国のずいぶん昔のモノです。ほんとうに美を楽しむには、これだけでは不十分やと思います。つまり、身近なモノに美を見出す目を持つことが肝心ということです。おまけに、親父方がね、奈良県の吉野の出身で、非常に木とかかわり合いのある仕事をしていたんです。小さいときにはよく親父と一緒に山歩きしてました。なので、何かDNAの中に木に対する愛着みたいなものが組み込まれてる人間やと思います。
そんな私が2007年に京都から水戸の常磐大学に移ったんですが、大学が偕楽園公園の中にあって、川にカワセミはいるわ、マガモはいるわ、ウナギもいるというすごい緑地が近くにあるんですよ。なのに、子どもがまったく遊んでいない。学生たちにも「すごい散策路があるぞ」と言っても全然反応しない。身近な自然への何という無関心!これはどうにかせなあかん!と思うたんです。それで、大学教育のフィールドに、その自然を使おうと思いました。学生たちと一緒に、大学構内の荒れていた森をだいたい週1回のペースで整備したんです。翌年には、ホタルの復活に成功しました。地元の自然保護団体と一緒に、公園内の保全活動にも取り組んでいます。

福井:私の場合は、森の活動というより、もともと子育て支援なんです。産後のお母さんが子連れで来て、自分に戻れるような時間を提供したいなと、最初は室内で託児付きの教室をやってました。例えばヨガだったら、赤ちゃん連れで来て、お腹の上で一緒にやってもいいし、子どもを預けてもいいみたいな感じで。でもやっぱり子どもとしては、初めて来たところで知らない人に預けられて、もう絶対泣きますよね。隣の部屋で泣いてる声聞きながら、ヨガや刺繍をするみたいな状況で、お母さんは全然リラックスできない。子どもも知らない人に預けられて、すごいストレスを感じて、家に帰ったあとも夜泣きがひどかったり…。子育て支援のやり方が何か違うなとずっと思ってたんです。
そんなときに、今活動している里山に親子で遊びに行く機会がありました。そしたら子どもは勝手に遊び始めました。私も自然の中に身を置いてすごくリラックスできたんです。何かこう、久しぶりに空見上げて、ああいいなって…。
子どもは帰る車の中で、もう十分遊んだからお昼寝してくれて、そのまま家でも寝てくれて、私も食事の準備できて…。これだ!って直感的に感じました。親にとっても子にとっても、外で過ごすっていうのがとてもいいということが分かりました。それが、森で親子活動を始めたきっかけです。

森が子どもを育ててくれる

松原:具体的には今、どんなことを森でするんですか?

福井:森の整備を担っている団体さんと一緒に活動しています。午前中は山の仕事のお手伝いです。例えば整備団体のおじさんたちが草刈り機で刈った下草を、子どもたちが集めて、たい肥にする場所まで運ぶとか。お昼はみんなでご飯を作って食べて、午後は森で自由遊びです。自由に遊ぶのがとってもいいんですけど、子どもたちが何をどうするか読めないので、スタッフはたいへんなんです。鬼ごっことか、かなり高低差あるところで走り回るので、誰がこけても転がってもおかしくない。安全管理のためのスタッフの育成がとても大切で、資格をとるのに研修受けたりとか、お金もかかります。なので皆さんには有料で参加してもらっています。親子で1回3300円です。年中さん以上の子どもたちのクラスなんかは特に人気で、ずっとキャンセル待ちなんですよ。

松原:有料で参加者が集まってくれるのは、とてもうらやましいですね。うちは教育なので、活動費は大学の教育費と助成金で賄ってます。だけど、学校教育の外で活動を持続的にしていくためには、参加者からお金を集めるということが必要になってくると思いますね。

福井:それだけの価値が森にはあると思います。私たちの活動に4年間参加してくれてた男の子が、この春卒園するんですね。そのお母さんが他のお母さんに、「見てください。ああなりますから」って。自分の息子を指して、すごく嬉しそうにおっしゃるんですよ。まず身体能力。すごい斜面を上がったり降りたりするので、もう体中がバネみたいになっちゃってるんです。それだけではありません。例えばその子は遊びながら、もっと小さな子によく手を差し伸べてくれるんです。しかも、そのあとすっと手を引っ込めたりするんです。その子ができそうだなと思うから、手を引っ込めるんです。すごく観察力とか状況判断力が身についています。親が意図せずとも、森の中で自然に身についてる。そういう様子を見たときは、活動やってて本当によかったなあと思いますね。

松原:育てるという意味では、うちに来るゼミの学生たちも、ある意味、森に育ててもらいました。授業には興味を持ちきれないというような学生たちも、うちのゼミに集まってきてたんですけどね。森を整備してみたら、成果が具体的な形になっていく。さらには、他の森に行って、子どもたちを指導するという立場に自分たちがなっていく。コンペの全国大会で賞を取ったり、補助金を自分たちで集めて、ビックサイトの環境展で3日間ブースを出展したりね。自分たちの活動をちゃんと語れるようになりました。結局、森を再生させるっていうことは、再生が進むにつれて自分も再生させているようなところがあるように思いますね。

森を育み 森に育まれる

福井:本当にそうですね。私たちの年代って、森に入るってことを子供の時期にあまりやってないので、大人になって子どもといっしょに初めて入って、森ってこんなとこなんだって感動するんです。「森を大切に、木は切っちゃいけない」みたいに思ってたりするので、「木って切らなきゃいけないんだ」とか、そういう基礎から整備団体の皆さんに習います。お母さんがまず森のことを知って、「お父さんちょっと、休みだったら次来てよ」みたいにお父さんを誘います。お父さんはまき割りとかすぐ戦力になって、子供との交流もできるし、だんだんはまっていくんです。「この活動楽しい!」で続けてるうちに、「続けるにはこういう仕事があるんだ」ということを活動の中で知って、「じゃ僕たちできることないかな」っていうところに行きつくんですね。森を整備する団体に、私たちのところから今20組ぐらいのご家族が入会されています。

松原:実は私の方は大きな課題があるんです。この春大学を退官するので、これまでのように大学のゼミで森の保全活動ができなくなるんです。実は、森に隣接して大学の付属幼稚園がありまして、幼稚園に引き継いでもらおうと思っています。今でも年に1回、ホタル観賞会ということで幼稚園の先生が父兄と一緒に子供たちを連れて森に入ってるんです。ときどき先生たち中心に森の掃除とかもやってくれています。これからはもっと外に開かれた形になるといいなと思っています。

福井:それは、ぜひ幼稚園の子どもたちに森に親しんもらえばいいですね。例えばイベントを企画して、まず森の存在を知ってもらう。ホタル観賞会だけでなく、園児の親子を対象にワンシーズンに1回ぐらい森を散策してもらうとか。「1日なんか楽しかった!」「これが日常になったらいいな!」みたいな感じで。子供たちが日ごろから森で遊ぶ姿を見ていると、保護者としての私の経験では、「お世話になってるから草刈りでもしようか」ってなるんですよね。
幼稚園の場合は安全管理面で、子どもたちを連れて森に入ることに抵抗があるかもしれないので、野外活動を実践しているプレイリーダー的な方と一緒に行くのがいいと思います。その方に先生たちがついていけば、安心して活動できますよね。
あと、なにか楽しい要素があったらいいですね。例えば、お母さん達は絶対おいしいものが好きなんです。私たちも活動するときは毎回、おいしいもの用意してますよ。

松原:それは、大切ですよね。僕も、森を舌でも味わえる場所にしようということで、助成金で栗の木とかんきつ類を学生たちと植えました。そういう仕掛けが身を結ぶのは、「桃栗3年、柿8年」だから少し先になりますが、近隣の子どもたちが楽しめる森になればいいなと思っています。

福井:私たち、とことん森の中で遊ぶっていうのが主なんですけれども、整備した場所のビフォー・アフターの写真を見て、整備団体のおじ様が「すごいなあ」なんてちょっと一言ほめてくれると、子どもたちはすごくほこらしげにしてます。遊び半分でやってる作業でも、自分たちがやったことでこんなに綺麗になるんだなと。森の整備作業って、作業だけではない何かがあるなと本当に思います。
親子と森と整備団体さんが繋がって、森を整備しながら、森を活用する。それがぐるっと回って、持続可能な形で後継者の育成にもなるっていう。そういうのをパッケージにして、全国みんなでやったらいいと思うんです。

松原:ぜひそうなってほしいですね。森は人を育てるっていうことで、もう一つ。実は森の作業をするようになって、うちのゼミでカップルが二つできて、結婚までいったんですよ。

福井:森が人を育てるっていうのは本当だなと思います。出会いも森で育まれたんですね。ぜひ将来は子どもといっしょに森に入ってもらいたいですね。