もりハグ!広場
どんな もりハグ!にしたいですか?
兵庫「ナシオン創造の森育成会」中尾利子さん × 山形「ふるさと創り鶴岡」菊池俊一さん
プロフィールご紹介
中尾利子さん
ナシオン創造の森育成会(兵庫県西宮市)理事長。宅地開発で残された約14haの山林を「再生の森」「活用の森」「育成の森」「保全の森」の4つに分け、18区画の目標林を設定。20人のお仲間と整備されています。植生調査で和紙の原料になるガンピを発見!ガンピを育むことで適度な日当たりと風通しの良い森林環境が育まれているそうです。和紙作りも始まって、森は地元の子供たちの学習の場になっています。
菊池俊一さん
NPO法人公益のふるさと創り鶴岡(山形県鶴岡市)理事。「ケヤキの森がっこうプロジェクト」では荒れていた森林公園を利活用することで、素敵な空間に変えてきました。目指すのは『市民自らが作る森林公園』。親子向けの自然観察会を中心に森づくりの輪を広げています。かたや山形大学で教鞭をとる森林科学の専門家、学生たちも森での実践にまきこまれているとか!
事務局:ズバリ、このもりハグ!にお二人は何を期待してますか?
中尾:皆さん森を歩かれて、どなたも森はいい、気持ちがいい、森は最高とおっしゃるんです。けれども、なぜ森林を育まなくてはいけないのかっていう基本的なことがなかなか伝わってないと思うんですよね。それをぜひ、このサイトで伝えてほしいと思うんです。森林の機能について、基本的なことを発信することがすごく大事だと思うんです。本当は学校で習わないといけないことなんだけど、学んでこなかった。私も森林整備をして自分で学んで、いろんなとこでわかってきたわけなんですよね。
菊池:おっしゃる通りで、今の日本の教育、私たちの生活や生存に関わるという観点から森の役割を学ぶ機会が全くないです。生物の授業で生き物については学びますが、森の総体的な見方・考え方については学んでない。教育機関が変わっていかなきゃいけないけど、我々市民団体として何ができるかと言ったら、今やってる活動の中に、小中学校あるいは高校を引っ張って、入れ込んじゃうということをしなきゃいけないんだろうな、というふうに思ってます。
中尾:例えばこのまえすごく面白いことがありました。皆さんのところもそうだと思いますけどね、虫が減ってきてるんです。小学校3年生が参加して毎年4回自然体験学習をやっているんですが、「生きもの探し」のときに女の子が一生懸命、土を掘ってるんです。「虫がいないよう」ってね。で、掘ってたらすごい綺麗な菌糸が見つかったんですよ。その子が喜んでね、「おばちゃん、おばちゃん、これ何?」と言って持ってくるんです。それは私たちが切った木の朽ちたところから出てきていました。「おばちゃんたちが切った木は何年か経って、だんだんぼろぼろになってきてね、ただぼろぼろになるんじゃなくって、この菌糸がこういう役目を果たしてるんや」いうことで、そのときに森の機能について話しました。
事務局:すばらしいことですね。菊池さんは、もりハグ!にどんなことを期待しますか?
菊池:森を育んでいく仲間たちをふやしたいっていうのが私の目標なんです。森林科学を専門にやって気付いたのは、森とのつき合いから市民が遠ざかっているために、様々な問題が生じているということです。例えば激甚災害が発生してしまったら、大規模にお金をかけて災害復旧を行い防災・減災施設を整備することは行政がやることですが、里山のような近い場所に関しては、私たちがやるべきことがあると考えています。かつて‟道普請“という言葉が日本にありました。自分の家の前を通る道に関しては、それぞれが手入れをしていたんです。同じように「森普請」を私たちの日常生活の中に入れ込むべきだと考えています。それだけ、日本という国は森に近い国なんです。森普請を一緒に行う仲間をふやしたいです。
もりハグ!の中でも、それぞれの団体さんで持ってる目標が違っていると思います。それぞれの目標というのが、裏返せば多分、それぞれが森に求める多様な機能なんでしょうね。ですので、「私たちはこんな目標を持ってます、その目的を達成するためにこんな方針で進んでいます」という情報を私たちが共有するということができれば、すごいことじゃないかなと思っています。
木が枯れてきたとき どうしますか?
中尾:私の団体では、機能別に18の目標林を整備しています。ただそのうち一つが問題になっています。赤松林という区域を設定してるところがあるんです。去年の末に松の害虫が入りまして一気に枯れました。一度10年前にそこには害虫が入ってるんです。10数年経つとまた枯れてきたんですね。もうこれはアカマツ林じゃなくって、本来の広葉樹林に変えていこかなと、今ちょっと考えてるとこです。
菊池:松枯れに関しては、庄内地方も延長33キロのクロマツ海岸林を持ってまして、これが本当に松枯れで今困ってます。ほとんどクロマツなもんですから、松枯れ病が発生してしまうと全然防げないんです。ただ、塩や風の影響の少ない内陸側については、少しずつ広葉樹が入ってきていますので、それらを針広混交林に誘導していこうということを今、始めています。
森づくりって本当に長い年月がかかる話なので、気象災害が起きたり、病虫害が起きてしまうということも当然あります。森の姿ががらっと変わったら、今度は変わった森とつき合っていくっていうこともありではないかと思いますね。
中尾:菊池先生は学者さんでいらっしゃいます。それと同時に、支援と直接関わっていらっしゃる。そういう人のお話っていうのは、私たちにとってとても貴重だなと思います。こういう機会を是非ともふやしていただきたいです。
若い人に どう伝えますか?
事務局:団体さん共通の課題としてもう一つ、若い人たちにどう伝えていくかということがありますね。
菊池:地方で悩ましいのは、小中高校が終わってしまうと、一度都会に出るというようなことになってます。小中高校で地元の森に入り込んで遊びをした子たちも、結局そのあと離れちゃうんですね。これはなかなか解決できないなというふうに思います。
そんな中でいま取り組んでるのは、20代後半から30代の、小さなお子さんをお持ちで定住をされている方々へのアプローチ。この方々が、多分次世代を担ってくれる核になるんじゃないかなと思ってます。ケヤキの森で、どんぐりを拾って木を育てていこうという「里親ポット」をやっています。一度、お子さんとそれぞれのお宅にポットを持ち帰り育てていただき、苗を数年後に森に戻していただきます。自分の家で、どんぐりの苗が育つ。日常生活の中に森がある。一本の苗木ですけど、森との繋がりを作るためにはとても重要かなと思ってます。
中尾:ここ数年感じていることがあります。今までイベントで炊き出しなんかをしてたんですけども、コロナ禍でそういうのをやめて、ただ単なる森の散策というのをやってみたんですね。以前なら私たちが森のあちこちに立って、自分たちはこういう整備してるとか説明してたんですけど、1回自由に中に入ってもらおうということをやったら、たくさんの方が来られましてね。アンケートを見ると、ものすごい自由にいいことが書いてありました。ちょっと、今まで余計なこと言いすぎてたかなと思いました。自由に森を見ていただくいうことを今回やってみて、とてもよかったなと思ってます。
こういう場が欲しかったです!
菊池:本当にフラットに、同じ場に立って話をする、そして話を聞くということが今、中尾さんとできてますよね。そういうプラットホームに、もりハグ!が育っていってほしいなと思います。それぞれの活動地域は気候も社会背景も歴史も違う。そんな中でいろんな森があります。それに関わっている方々も、様々に違う背景を持ってらっしゃいます。立ち位置も経験も違っていたりします。森の多様性と同じで、人の多様性、森を育む人の多様性ってものが、ここにあるように思います。499の団体でしたっけ?この20年間でそれだけの方々がいらっしゃるんだから、頻度高く顔を見せ合いながら、様々な情報を交換していくっていうことを続ければ、それぞれ得るところがあると思うんです。基盤ですね、我々のインフラストラクチャーとして、このもりハグ!を使っていけたらいいなと思います。
中尾:私なんかはどうしたらいいか分からないと、本屋さん行っていろんな本探したりして思うんですけれどもね。結局はやっぱり自然を見てる人ね、自然と関わってる人の言葉っていうのは、ものすごく大切で貴重だなと。今回、あらためて思いました。
菊池:〇〇質問箱のような、何かの疑問があった時にここに投げかければ、それが返ってくるっていうような仕組みも作りたいですよね。日々の活動の中で、これちょっと聞いてみたいってことがあれば、パッとすぐに尋ねられるような場もできたらいいなあって思います。 どんどん進化させていきたい。まずはとにかく皆さんにもりハグ!に参加していただきたいです。