みんなの森づくり 活動の20年

「みんなの森づくり活動助成」は、よりよい環境を次世代に引き継ぐことを目的とし、生活に身近な緑をまもり育てる活動に取り組む市民活動団体の支援*1を2000年よりスタートしました。そこから20年、時代の変化に応じて助成対象の範囲や助成期間等、プログラムをみなおしながら事業を継続してきました。2020年度までに全国47都道府県の延べ499団体を支援し、累計50万人以上もの方々がこのプログラムご参加頂きました。

*1.時期によって異なりますが、概ね3カ年継続で合計125万円を支援する助成プログラムです。

みんなの森づくり活動助成事務局では、20年の節目に過去に助成を受けた団体を対象にアンケート調査*2を実施しました。このアンケートの結果と共に、499(アンケート実施時は479団体)の活動が、どのような内容でどのような方々のどのような想いによって取り組まれてきたのか振り返りました。

*2.詳しくは「みんなの森づくり活動効果検証アンケート調査(PDF)」をご覧ください

みんなの森づくり活動の特徴


図:参加団体の活動目的

アンケート調査では、団体の活動目的について複数回答で訊ねました。地域の環境改善が最も多く、次いで地域の美化、景観づくり、環境教育と続きました。具体的な活動として、身近な道や、学校、公園での植樹を行う、まちづくりに近いものから、森林保全、里山保全、棚田の保全など自然の中での活動までを含みますが、森林、里山、棚田等を地域の財産として守ることも、まちづくりの一つと考える傾向が見られます。また、子どもを対象とした活動も多く、植樹、花壇づくり、収穫体験という身近な活動から、里山保全の体験学習というものまで幅広い活動が含まれています。また、子育て支援・福祉を目的とした活動もあり、教育や幅広い世代の交流、コミュニティづくり等、「人づくり」を対象とした活動も多数行われていることが明らかになりました。

みんなの森づくりの活動の成果

アンケート調査では、助成期間中に実施した活動の成果についてどのように認識しているかも調査しました。95%の団体が「活動全般を通じて助成の成果を実感している」と回答しており、プログラムを通じてそれぞれの取り組みにおいて成果があげられていることが分かりました。一方でこのプログラムがどれほどの社会的インパクトをもたらすことができたのかについては、このアンケート調査からは明らかにすることができず今後の課題となりましたが、アンケートの自由記載や団体の皆様から頂戴するお手紙や、ヒアリングさせて頂いた際のお言葉の端々から、このプログラムが支援となり全国各地のそれぞれの活動場所で大きな成果を上げていることを実感しています。

みんなの森づくりの活動が取り組んできたこと

みんなの森づくり活動は、よりよい環境を次世代に引き継ぐことを目的としたプログラムですが、全国でこのプログラムに参加しくださった皆さんの取り組みを振り返り、今一度この意味を考えてみました。

(1)生活環境のアメニティを高める

「アメニティ」とは、イギリスを起源とした環境保全や都市計画においては環境質をあらわすとされています。イギリスのDavid L. Smith は「アメニティには3つの相があり、これらは総合的に考えなければならないものである」としています。

<アメニティの3相>

  1. 環境衛生(汚染、不衛生をなくすこと)
  2. 快適さと civic beauty(生活環境のなかに美しさを育てること)
  3. 保全(すばらしい価値のある自然や歴史は保全すること)

みんなの森づくり活動に参加頂いた取り組みは、度合いのバランスの差こそあれ、どの活動もこの3相について取り組んでいます。

例えば、多くの団体は不法投棄物の除去に多大なエネルギーと時間を注いでいますし、里山保全など林床を適切に手入することは病害虫の防除や水質改善にもつながっており、①環境衛生に取り組んでいるということができます。下草が刈られ枝打ちされた里山や雑木林の佇まいはそれだけで美しいものですが、林床が明るくなることで美しい花を咲かせる植物も育みます。公園や広場などでは、定期的に草が刈られることで散歩や休憩を楽しめる美しく快適な空間となります。花壇やコミュニティガーデンに咲く花々は目を喜ばせてくれます。手入れされた田畑の風景はどこか心和ませてくれます。

そしてこうした取り組みで木々や草花と触れ合うことは大きな楽しさや喜びをもたらしてくれており、②快適さと civic beauty にも取り組んでいるということができます。こうして、人の手により生み出された環境は、人の手の関わりが失われることであっという間に劣化します。つまり、みんなの森づくり活動が携わっている全ての活動が保全すべき価値ある環境なのです。

(2)地域のソーシャル・キャピタルを高める

「ソーシャル・キャピタル」の定義は未だ様々な議論がありあやふやなものですが、ここでは、「お互い様」の心をもち、互いに信頼し、助け合う関係性を広げ深めることが人々を幸福にし、社会を豊かにする、というような意味合いで考えます。

みんなの森づくりに参加頂いた活動は、「身近なみどりをまもり育てる」を共通項に持ちながらも、子育てや福祉、青少年育成や世代間交流といった相互扶助や参画・交流の創出、地域の活性化やコミュニティ醸成にも取り組んでいます。

みんなの森づくり活動が展開される多くの場所は、環境性や景観性といった価値をだれもが享受できる一方で、必ずしもその対価を受益者が負担しない「共有のみどり」です。厳密には所有者や管理者が存在しますが、恩恵に預かるのはもっと多くの人々です。ソーシャル・キャピタルの劣化による問題点の事例として「共有地の悲劇」が用いられますが、みんなの森づくり活動が展開されている場所は、いわば「共有地の悲劇」が起こりやすい場所で、取り組みの多くは、「共有地の悲劇」を起こさないために、あるいは起きてしまった悲劇を挽回するために展開されています。

一般には、市民活動そのものがソーシャル・キャピタルを高めると言われていますが、みんなの森づくり活動はソーシャル・キャピタルの劣化の最前線でそれに抗うように、仲間同士や地域の方々との絆を深め、互いに信頼し助け合いながら、みんなのために奮闘していて、地域のソーシャル・キャピタルを高める取り組みであるということができます。

以上のように、これまでプログラムに参加頂いた499の取り組みを振り返り、みんなの森づくり活動は、生活環境のアメニティを高め、地域のソーシャル・キャピタルを高めるものであったと考察します。本プログラムが、より快適で豊かで、人々が幸せを享受できる社会・環境を次世代に引き継ぐための一助となったと信じるとともに、このプログラムが未来を変える一石となることを強く願います。

みんなの森づくり活動に参加頂いた499の団体のみなさまはじめ、選考委員のみなさま、その関係する多くの皆様に心から感謝申し上げます。

※詳しくは、「みんなの森づくり20年のあゆみ(PDF)」をご覧ください